フィギュアのジャンプ名の由来は?
アクセル、サルコウ、ルッツ、リットベルガーは、最初に跳んだとされる選手の名前です。
1882年
フィギュアスケートの中継を見ていると、「トリプルアクセル」「4回転ルッツ」「サルコウ」といった言葉が次々に飛び交います。いまの競技で使われる基本のジャンプは6種類。トウループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、そしてアクセルです。
このうちいくつかは、跳び方や形からつけられた名前ですが、残りは人の名前です。そのジャンプを最初に跳んだとされるスケーターの名前が、そのまま技の名前になっているのです。
スピードスケートの靴で跳んだ「アクセル」
いちばん有名なのは、アクセルでしょう。名前の主は、ノルウェーのアクセル・パウルセン(1855〜1938年)です。パウルセンは1882年、ウィーンで開かれた大会で、このジャンプを初めて披露しました。驚くことに、このとき彼が履いていたのは、フィギュア用ではなくスピードスケート用の靴だったといいます。パウルセンは、スピードスケートの名選手でもあったのです。
アクセルは、6種類のジャンプのなかで唯一、前を向いて踏み切るジャンプです。着氷はほかのジャンプと同じく後ろ向きなので、そのぶん空中で半回転多く回らなければなりません。シングルアクセルは1回転半、トリプルアクセルは3回転半。トリプルアクセルは「3回転というより4回転に近い」と言われるほどの大技で、6種類の中でもっとも難しいジャンプとされています。
サルコウ、ルッツ、リットベルガー
サルコウは、スウェーデンのウルリッヒ・サルコウにちなむジャンプで、1909年に彼の名前がつけられました。サルコウは世界選手権で通算10回も優勝した名選手で、1908年のロンドンオリンピックでは、フィギュアスケート男子シングルの金メダルに輝いています。
ルッツは、オーストリア・ウィーンのアロイス・ルッツの名前に由来し、1913年に彼が初めて跳んだとされています。ただし、スケートの歴史家マティアス・ハンペは、1920年代より前にこのジャンプに触れた同時代の資料を見つけられなかったといい、本当の「最初」がいつだったのかには疑問も残っています。
ループは、ドイツのヴェルナー・リットベルガーが1910年ごろに考案したとされるジャンプです。ドイツなどヨーロッパでは、いまも「リットベルガー」の名で呼ばれています。一方、英語圏や日本で使われる「ループ」という名前は、空中での回転を跳ばずに氷の上で行ったとしたら、刃の跡が輪(ループ)の形を描くことからきているといわれます。
人の名前ではないのが、トウループとフリップです。トウループは、刃の先のギザギザ(トウ)で氷をついて跳ぶループ、という意味の名前です。1920年代にアメリカのプロスケーター、ブルース・メイプスが考案したとされ、メイプスはフリップの考案者でもあった可能性があるといわれています。
女子初のトリプルアクセル
アクセルという名前が日本で特別な響きをもつのは、伊藤みどりの存在があるからでしょう。男子では1978年に、カナダのヴァーン・テイラーが国際大会で初めてトリプルアクセルを成功させましたが、女子にとっては長く手の届かない技でした。
伊藤みどりは1988年、愛知県選手権で女子として初めて公式戦でトリプルアクセルを成功させ、同じ年のNHK杯では国際大会でも決めてみせます。1989年には世界選手権で優勝し、1992年のアルベールビルオリンピックでは、女子選手としてオリンピックで初めてトリプルアクセルを着氷して、銀メダルを獲得しました。
そして2022年には、アメリカのイリア・マリニンが、国際大会で初めて4回転アクセルを成功させています。140年前、スピードスケートの靴で跳ばれた1回転半は、いまや4回転半にまで進化したのです。