サボテンのトゲは葉っぱ?
はい。サボテンのトゲは、葉が形を変えたものと考えられています。
窓辺の小さな鉢植えから、砂漠にそびえる巨大な柱まで、サボテンの姿はさまざまです。けれど、どのサボテンにもだいたい共通しているのは、葉っぱが見当たらないことと、鋭いトゲがあることでしょう。
ふつうの植物なら、光合成をするのは平たい緑の葉です。では、サボテンの葉はどこへ消えてしまったのでしょうか。答えは意外なところにあります。あの痛いトゲこそが、姿を変えた葉なのです。
トゲの付け根にある「綿のクッション」
サボテンをよく見ると、トゲはばらばらに生えているわけではありません。小さな綿のような毛のかたまりから、何本かずつまとまって生えています。このクッションのような部分は「刺座(しざ)」、英語ではアレオーレと呼ばれ、サボテンの仲間だけがもつ特徴です。
ふつうの植物では、葉の付け根に「芽」があり、そこから新しい枝が伸びていきます。刺座は、この芽が伸びずにぎゅっと縮まった、ごく短い枝にあたると考えられています。そして、その短い枝につくはずの葉が、硬く細いトゲに変わったものが、サボテンのトゲだというわけです。
トゲは、葉と同じように茎の先端近くで、小さな細胞のかたまりから生まれます。ところが成長の途中で、葉らしく平たく広がるのをやめ、硬い繊維のような細胞をつくって細く尖っていきます。できあがったトゲは、光合成もしない硬い組織になります。
葉をもつサボテンもある
トゲが葉であることを教えてくれるのが、ちょっと変わったサボテンたちです。中南米などに自生するペレスキアの仲間は、サボテン科の植物でありながら、ふつうの木のように平たい緑の葉を茂らせます。そして葉の付け根には、ちゃんと刺座があり、そこからトゲが生えています。
ペレスキアは、多肉質の茎をもつ前のサボテンの祖先の姿に近いと考えられています。サボテンはもともと葉のある植物で、乾いた土地に適応するなかで葉を手放していったのです。
身近なウチワサボテンでも、葉の名残を見ることができます。新しく伸びてきた平たい茎の表面には、小さな円柱形の葉がつき、やがて落ちてしまいます。
葉をやめた理由、トゲの役目
葉を手放した理由は、水を守るためだと考えられています。広い葉は、光合成に向いている一方で、表面からたくさんの水分を逃がしてしまいます。雨の少ない土地では、それは命取りです。サボテンは光合成の仕事を緑の茎に任せ、水をたくわえる太い茎を守ることを選びました。さらに多くのサボテンは、涼しい夜に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、暑い昼間は気孔を閉じて水分を節約しています。
では、葉から変わったトゲは何をしているのでしょう。まず思い浮かぶのは、水分たっぷりの茎を動物に食べられないよう守る役目です。それに加えて、びっしり生えたトゲが日差しをやわらげ、茎の表面のまわりに空気の層をつくって、乾燥や暑さをやわらげているとも考えられています。
2012年には、中国の研究チームが、メキシコ原産のウチワサボテンの一種のトゲが、霧の小さな水滴を集め、付け根へと運ぶ構造をもっていることを報告しました。トゲの表面の細かな溝や形の工夫によって、水滴が自然に根元へ向かって移動していくのです。
そっくりさんにご用心
アフリカなどには、サボテンにそっくりな姿をした植物が生えています。トウダイグサ科のユーフォルビアの仲間です。太い緑の茎に、鋭いトゲ。見た目はサボテンそのものですが、まったく別のグループの植物です。
似たような乾燥地で暮らすうちに、別々の植物が似た姿に進化したと考えられています。ただし、トゲのでき方は違います。ユーフォルビアには刺座がなく、トゲが2本ずつ対になって生えていることがよくあります。見分けるときは、トゲの付け根に綿のような刺座があるかどうかを見てみましょう。