自転車はいつ生まれた?
1817年、ドイツのドライスが走らせた、足で地面をけって進む二輪車が始まりとされます。
1817年
通勤や通学、買い物に、子どもの遊びに。自転車はあまりにも身近で、それが誰かの「発明」だったことを意識する機会はあまりありません。
けれども、2つの車輪を縦に並べ、その上に人が乗ってバランスを取りながら進む、というのは、考えてみればかなり大胆なアイデアです。この乗り物はいつ、どんなきっかけで生まれたのでしょうか。
ペダルのない「走る機械」
自転車のはじまりとされるのは、ドイツ・バーデンの役人で発明家のカール・ドライスが考案した乗り物です。1817年6月12日、ドライスはマンハイムの町から、この乗り物で片道約7キロの道を走り、1時間あまりで往復したと伝えられています。往復14キロほどを1時間あまりですから、当時の郵便馬車よりも速かったといわれます。
木でできた車体に、前後2つの車輪。前輪はハンドルで向きを変えられるようになっていました。ただし、ペダルはありません。乗る人はサドルにまたがり、両足で地面をけって進むのです。いまの子ども用の「ペダルなし自転車」を思い浮かべると近いかもしれません。
ドライス自身はこれを「ラウフマシーネ(走る機械)」と呼び、考案者の名から「ドライジーネ」とも呼ばれました。乗り物はヨーロッパ各地で話題となり、イギリスでは「ダンディ・ホース(しゃれ者の馬)」というあだ名もついています。
火山の噴火が生んだ?
ドライスがこの乗り物を考えた背景には、思いがけない出来事があったとする説があります。1815年、インドネシアのタンボラ山が大噴火を起こし、大量の火山灰が地球を覆いました。その影響で翌1816年、ヨーロッパや北アメリカは異常な低温に見舞われ、「夏のない年」と呼ばれるほどの大凶作になります。
飼い葉が不足して多くの馬が飢えたり、処分されたりしたため、馬に頼らずに移動できる手段が求められた――。ドライスの研究者として知られるハンス=エアハルト・レッシングは、こうした事情がきっかけになったと考えています。ただし、決定的な記録があるわけではなく、ひとつの有力な説として受け止めるのがよさそうです。
ペダル、大きな前輪、そしてチェーン
足で地面をける乗り物に、ペダルがついたのは1860年代のフランスでのことです。ペダルは前輪に直接取りつけられ、木の車輪に鉄の輪をはめた乗り心地はひどく、「ボーンシェイカー(骨ゆすり)」と呼ばれました。
前輪を直接回す方式では、ペダルを1回こいでも前輪が1回転するだけです。そこで速く走るために前輪がどんどん大きくなり、1870年代には、前輪の直径が1.2〜1.5メートルほどにもなる「ペニー・ファージング」型が人気を集めました。ただ、高い座席から前のめりに投げ出される事故が絶えませんでした。
転機となったのが、1885年にイギリスのジョン・ケンプ・スターリーが売り出した「ローバー安全型自転車」です。前後の車輪を近い大きさにして、ペダルの力をチェーンで後輪に伝える仕組みで、現在の自転車の基本形がここで完成したといわれます。1888年には、ジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを実用化し、乗り心地も大きく改善されました。
ダ・ヴィンチの自転車は本物?
「自転車を最初に考えたのはレオナルド・ダ・ヴィンチだった」という話を聞いたことがあるかもしれません。1970年代、彼の手稿の修復中に、チェーンつきの自転車のような落書きが見つかったと発表されたのです。
しかし、その後の研究で、この絵は後の時代に描き加えられたものである可能性が高いと指摘されています。少なくとも、ダ・ヴィンチが自転車を設計していたことを裏づける確かな証拠はありません。