傘はいつ生まれた?
4000年以上前の古代エジプトやメソポタミアで、王や貴族を日差しから守る「日傘」として生まれました。
4500年前
雨が降れば傘をさす。私たちにとっては当たり前の習慣です。けれども、人類が最初に傘を手にしたとき、それは雨よけではありませんでした。強い日差しをさえぎる「日傘」であり、しかも誰もが使えるものではなかったのです。
傘が雨の日の道具になり、さらに駅の売店で気軽に買えるものになるまでには、数千年の道のりがありました。
はじまりは王さまの日傘
傘の歴史は、古代の大河文明までさかのぼります。古代エジプトの美術に描かれた最も古い日傘は、紀元前2450年ごろの第5王朝の時代のものとされています。メソポタミアでも、紀元前2300年ごろの戦勝記念碑に日傘が登場し、のちのアッシリアの浮彫りにもたびたび描かれました。
こうした絵の多くで、日傘を持つのは王自身ではありません。従者が後ろから、王の頭上に差しかけているのです。日傘は、身分の高さを示すしるしでもあったのです。古代ギリシャでも、紀元前5世紀の後半には、日傘はおしゃれな女性に欠かせない持ち物になっていたといわれます。
中国で生まれた「たためる傘」
雨の日にも使える傘が発達したのは、中国だと考えられています。伝説では、春秋戦国時代の名工・魯班(ろはん)の妻が傘を考え出したとされます。もちろん伝説ですが、紀元21年には、新の王莽(おうもう)のために、関節で折り曲げて開いたり閉じたりできる傘が作られたという記録があります。
紙に油を塗って水をはじくようにした油紙の傘も、中国で生まれたと考えられています。軽くて雨をしのげるこの傘が、やがて東アジア各地へと広がっていきます。
傘をさす男は笑われた
一方、ヨーロッパでは長いあいだ、傘は女性の持ち物でした。18世紀のロンドンで、男性がそれを日常的に持ち歩くのは、かなり勇気のいることだったのです。
その壁を破ったのが、旅行家で慈善家のジョナス・ハンウェイです。彼は1750年ごろから、雨の日に傘をさしてロンドンの街を歩きました。雨の日が稼ぎどきだった辻馬車の御者たちは、彼をやじり、追い立てようとしたといいます。それでもハンウェイは1786年に亡くなるまで、およそ30年にわたって傘を持ち歩き続けました。やがて男性も傘を使うのが当たり前になり、1852年にはイギリスのサミュエル・フォックスが、鋼鉄の骨を使った丈夫な傘を考え出します。
和傘、そしてビニール傘
日本に傘が伝わった時期ははっきりしません。古くは日よけや、身分の高い人にさしかける天蓋のようなものとして使われていたと考えられています。開いたり閉じたりできる傘が広まったのは安土桃山時代ごろ。竹の骨に和紙を張り、油を塗って防水した和傘は、江戸時代に庶民にも広がりました。
明治以降、金属の骨の洋傘が普及すると、和傘は日常から姿を消していきます。そして戦後、日本から新しい傘が生まれました。ビニール傘です。東京の傘メーカー(現在のホワイトローズ)の須藤三男は、進駐軍が使っていたビニールのテーブルクロスに目をつけ、まず布の傘にかぶせるビニールのカバーを作りました。さらに1950年代、傘そのものにビニールを張った傘を開発します。これが世界初のビニール傘とされています。
はじめは問屋になかなか扱ってもらえませんでしたが、1964年の東京オリンピックのころ、アメリカのバイヤーの目にとまり、透明なビニール傘がニューヨークで人気を集めました。これをきっかけに、日本でも広く使われるようになったといわれます。