「グッバイ」の元の意味は?
「God be with ye(神があなたとともに)」の短縮形。Godはのちにgoodに。
英語の別れのあいさつ「グッバイ(goodbye)」。日本語でも「グッドバイ」「グッバイ」として、映画や歌のタイトルなどでおなじみです。
でも、この言葉をよく見ると、少し不思議です。good は「よい」ですが、bye とはいったい何でしょうか。「よい、さようなら」では意味が通りません。じつは goodbye は、長い祈りの言葉がぎゅっと縮まってできた言葉なのです。
もとは「神があなたとともに」
goodbye のもとになったのは、**「God be with ye(ゴッド・ビー・ウィズ・イー)」**という言い回しです。ye は you の古い形で、「神があなたとともにありますように」という意味。旅立つ人や別れる相手の無事を祈る言葉でした。
この長いあいさつは、毎日のように口にされるうちに、どんどん短くなっていきます。「God be with ye」から「God b’wye」のような形になり、さらに縮まって「godbye」に近い形になりました。くり返し使われる言葉ほどすり減って短くなるのは、どの言語でもよくあることです。
1573年の手紙
この縮まった形が記録に残る古い例として知られているのが、1573年にイギリスの学者ゲイブリエル・ハーヴェイが書いた手紙です。ハーヴェイはケンブリッジ大学の学者で、詩人エドマンド・スペンサーの友人としても知られています。
その手紙には、「godbwyes」という言葉が出てきます。相手から「ガロン(gallon)」いっぱいの godbwye をもらったお返しに、「ポトル(pottle)」分の howdye を返そう、という調子の、しゃれのきいた一文です。howdye は「How do ye(ごきげんいかが)」を縮めたあいさつ、ポトルは半ガロンにあたる昔の液量の単位です。あいさつを酒か何かのように量ってやりとりする、学者らしい冗談になっています。
16世紀の後半には、すでに「God be with ye」を縮めた別れのあいさつが、手紙の中で冗談の種になるほど親しまれていたわけです。
God が good に変わったわけ
では、God がなぜ good になったのでしょうか。
英語には、「good morning(おはよう)」「good night(おやすみ)」「good day(ごきげんよう)」のように、good で始まるあいさつがたくさんあります。godbye もこれらの仲間だと感じられるようになり、いつしか God が good に置きかわったと考えられています。言葉の形が、意味の近いほかの言葉に引き寄せられて変わる、というのもよくあることです。
こうして「goodbye」の形が生まれ、やがて定着していきました。ハイフンを入れた「good-bye」という書き方も、長く広く使われてきました。
おもしろいのは、こうして生まれた goodbye が、さらに縮まって「bye」や「bye-bye」になったことです。もとは「be with ye」の名残にすぎなかった bye が、今では一語で「さよなら」の意味をもっているのです。
世界の別れの言葉にも祈りが
神への祈りが別れのあいさつになった例は、英語だけではありません。フランス語の「アデュー(adieu)」は「神のもとへ」、スペイン語の「アディオス(adiós)」も「神に」という意味の言葉から来ています。どちらも、相手を神にゆだねる、つまり「神のご加護がありますように」という気持ちがこめられています。
日本語の「さようなら」が「そういうことならば」から生まれたのとは、ずいぶん違いますね。別れの言葉には、それぞれの文化が別れぎわに何を大切にしてきたかが映しだされているのかもしれません。