気球に初めて乗ったのは動物?
はい。1783年9月、ヒツジとアヒルとニワトリがフランスの熱気球に乗り、人より2か月早く空を飛びました。
ライト兄弟が動力つきの飛行機で空を飛んだのは、1903年のことです。けれども人類は、それより120年も前に、熱い空気をつめた大きな袋につかまって空へ上がっていました。
その舞台は、18世紀のフランス。王さまと大勢の見物人が見守るなか、初めて気球で空へ旅立ったのは、人間ではなく、3匹の動物たちでした。
紙屋の兄弟のひらめき
熱気球を発明したのは、ジョゼフ=ミシェルとジャック=エティエンヌのモンゴルフィエ兄弟です。2人は、フランス南東部の町アノネーで紙の製造業を営む一家に生まれました。
兄弟は、ものを燃やしたときの煙が上へ昇っていくことに目をつけ、紙や布の袋に煙をためて浮かばせる実験を始めます。ただ、兄のジョゼフは、煙の中に物を浮かび上がらせる特別な気体がふくまれていると考えていて、湿ったわらや羊毛のように、もくもくと煙の出るものを好んで燃やしたといわれます。実際には、気球を浮かべていたのは煙ではなく、温められて軽くなった空気でした。
1783年6月4日、兄弟はアノネーで初めての公開実験を行います。布と紙でできた大きな気球は、人を乗せずに10分ほど空を漂い、2キロメートルほど離れた場所に降りました。
ヒツジとアヒルとニワトリ
この話はすぐにパリまで伝わり、同じ年の9月19日、ベルサイユ宮殿の前で、国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットを招いた公開実験が行われることになりました。
心配されたのは、空の高いところで生きものが無事でいられるのか、ということでした。そこで、人より先に動物を乗せてみることになったのです。気球の下につるしたかごに乗りこんだのは、ヒツジ1匹、アヒル1羽、ニワトリ1羽でした。ヒツジには「モントシエル(空へ昇る)」という名前がついていたと伝えられています。
気球は高さ500メートルほどまで昇り、約8分間の飛行ののち、3キロメートルほど先に降りました。3匹とも生きて地上に戻り、生きものが空を飛んでも大丈夫だということが確かめられたのです。着陸のときにヒツジがニワトリを踏んでけがをさせた、という話も残っています。当時の版画には「13万人を超える観衆」と書かれていて、たいへんな注目を集めたことがわかります。
2か月後、ついに人が空へ
動物たちの無事を見届けて、いよいよ人の番です。1783年10月15日、物理や化学の教師だったピラートル・ド・ロジエが、地面とロープでつないだ気球に乗り、高さ26メートルまで上がりました。
そして11月21日、ド・ロジエとダルランド侯爵の2人を乗せた気球が、パリのラ・ミュエット城の庭から、ロープなしで飛び立ちます。人を乗せた気球が自由に空を飛んだのは、これが初めてでした。気球はパリの空を約25分かけて9キロメートルほど進み、無事に着陸しました。
じつは、ルイ16世は最初、危険な役目だからと死刑囚を乗せるつもりだったといわれます。それを聞いたド・ロジエが、空を飛ぶ最初の栄誉を囚人に与えるべきではないと周囲に働きかけ、自分たちが乗ることになったのだそうです。
その10日後の12月1日には、水素ガスをつめた気球も人を乗せて飛び、1783年は「人が空を飛んだ年」になりました。
日本の空に熱気球が上がったのは
日本人の手で作られた熱気球に人が乗って浮かんだのは、ずっと後の1969年9月のことです。日本気球連盟によると、京都の学生グループが作った気球と、北海道大学探検部が作ったバーナーを組み合わせた「イカロス5号」が、北海道の洞爺湖の近くで浮上しました。
モンゴルフィエ兄弟はわらを燃やしていましたが、いまの熱気球は、プロパンガスのバーナーで空気を温めて飛んでいます。