鳴き砂はなぜ鳴る?
粒のそろったきれいな石英の砂がこすれ合い、その振動が音になって響くためと考えられています。
砂浜を歩くと、ふつうはザクザクと砂が崩れる音がするだけです。ところが、ある種の浜辺では、一歩ふみ出すごとに足もとから「キュッ」「クックッ」と、まるで鳴き声のような音が聞こえてきます。
これが「鳴き砂(鳴り砂)」です。日本には、こうした砂浜が各地に点在しています。いったい砂のどこから、あの音は生まれてくるのでしょうか。
主役は石英の粒
鳴き砂の主な材料は、石英という鉱物の粒です。石英は水晶と同じ成分をもつ硬い鉱物で、多くの砂に含まれています。鳴き砂の浜として知られる京都府京丹後市の琴引浜では、砂の約7割が石英だとされています。
鳴き砂が鳴る仕組みには、まだよくわかっていない部分もありますが、おおまかには次のように考えられています。乾いた砂を足でぐっと踏みこむと、砂の層がずれて、粒どうしが一斉にこすれ合います。このとき粒の表面では、摩擦でひっかかっては滑る、という動きが細かくくり返されます。その振動が砂の層の中で響き合い、音になって聞こえるのです。
ただし、どんな砂でも鳴くわけではありません。鳴くためには、粒の大きさがよくそろっていて、形に丸みがあること、そして何より、粒の表面がきれいであることが必要だとされています。
ほんの少しの汚れで黙ってしまう
鳴き砂は、とても繊細です。粒の表面に油や細かな泥などの汚れがわずかに付くだけで、摩擦の具合が変わり、音がしなくなってしまいます。そのため鳴き砂は、「海のきれいさを測るバロメーター」とも呼ばれています。
1997年、日本海で起きたロシアのタンカー「ナホトカ号」の重油流出事故では、琴引浜にも重油が流れ着き、砂の鳴きに大きな影響が出ました。地元の人々が清掃などの取り組みを続けた結果、砂は再び鳴くようになったといいます。琴引浜では2001年に浜辺での喫煙を禁止するなど、砂浜を守る活動が続けられていて、2007年には国の天然記念物と名勝に指定されました。
ほかにも、島根県大田市の琴ヶ浜、石川県輪島市の琴ヶ浜、宮城県気仙沼市の十八鳴浜(くぐなりはま)などが、鳴き砂の浜として知られています。十八鳴浜という名前は、砂の鳴る「クック」という音を「九九(くく)」に見立て、九と九を足して「十八」の字をあてたものといわれます。島根の琴ヶ浜の砂の音は、「日本の音風景100選」にも選ばれています。
砂漠で響く「うなり声」
鳴き砂の仲間は、海辺だけでなく砂漠にもあります。ただし、こちらはまったく別物の迫力です。
世界の砂漠には、大きな砂丘の斜面を砂がなだれ落ちるときに、低く重い「ブーン」という音を響かせる場所が、約35か所知られています。その音は数分間続くこともあり、大きさは最大で105デシベルにも達するといいます。中国・敦煌の鳴沙山は、その名のとおり、砂が鳴る山として古くから知られてきました。
砂浜の鳴き砂が、踏んだ瞬間に「キュッ」と短く鳴るのに対して、砂漠の「鳴る砂丘」は、低い音が長く響き続けます。乾いた砂粒がこすれ合うことが出発点だという点は共通していると考えられていますが、音の高さも長さも大きく違い、仕組みは別々に研究されています。砂丘がなぜあれほど大きな音を長く出せるのかについては、研究者のあいだでいまも議論が続いています。
どちらの音も、乾いた砂の粒たちがそろって動いたときにだけ生まれる、ささやかな自然の楽器といえるかもしれません。