世界一乾燥した場所は?
答え
南極のドライバレーです。氷の大陸にありながら、雪も氷もほとんどない谷です。
「世界一乾燥した場所」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはサハラ砂漠でしょう。照りつける太陽、どこまでも続く砂丘。けれども、地球でもっとも乾いた場所の候補として真っ先に名前が挙がるのは、意外にも南極です。
南極は氷に覆われた大陸ですが、降水量で見るとほとんどの地域が砂漠の基準を満たしています。そのなかでも際立って乾いているのが、ロス海の近くに広がる「マクマード・ドライバレー」と呼ばれる一帯です。
氷の大陸にある、氷のない谷
ドライバレーは、南極大陸ではめずらしく地面がむき出しになった谷の集まりです。岩と砂利が広がる景色は、南極というより荒涼とした惑星のようにも見えます。
ここが乾いている理由は大きく二つあります。ひとつは、周囲を囲む南極横断山脈が、海から流れ込む湿った空気をさえぎっていること。もうひとつは、内陸の高原から吹き下ろす「カタバ風」です。冷たく重い空気が斜面を駆け下りる風で、ときに時速300キロを超えるともいわれます。この乾いた強風が、わずかに降った雪も溶ける間もなく水蒸気へと変えてしまうのです(氷が液体を経ずに気体になる「昇華」という現象です)。
その結果、この谷では約200万年にわたって雨らしい雨が降っていないとも言われています。推定には幅がありますが、私たちホモ・サピエンスが登場するよりはるか昔から、ずっと乾いたままだというのは驚くべきことです。
何百年も朽ちないアザラシ
あまりに寒く乾燥しているため、ドライバレーではものが腐りにくいことも知られています。海から迷い込んだアザラシが谷の奥で力尽き、そのままミイラのような姿で何百年、場合によってはそれ以上残っている例が見つかっています。
微生物の活動がほとんど止まってしまうほどの環境は、生命の限界を調べる研究者にとって格好のフィールドです。実際、1970年代の火星探査計画「バイキング」の準備でも、この谷は地球上の「火星に近い場所」として注目されました。
雨が降ったら事件になる砂漠
一方、極地以外の砂漠でもっとも乾燥しているとされるのが、南米チリのアタカマ砂漠です。太平洋岸に沿って南北に細長く伸びるこの砂漠は、沖を流れる冷たいフンボルト海流と、東のアンデス山脈にはさまれ、雨雲がほとんど育ちません。
北端の港町アリカでは、年間の平均降水量が1ミリに満たないとされます。記録の上では、1903年10月から1918年1月まで、およそ14年にわたって一度も雨が観測されなかった期間もありました。その間に生まれた子どもが、中学生になるまで一度も雨を見なかった計算になります。
火星のリハーサル会場
アタカマ砂漠の中心部、ユンガイと呼ばれる地域の土壌は、生命の痕跡がきわめて乏しく、化学的な性質も火星の土に似ていると考えられています。そのためNASAなどの研究チームは、ここで火星探査用の探査車や掘削装置を試験してきました。
火星で「生命の痕跡を探す」機械をつくるには、まず「ほとんど何もない土」で正しく動くかを確かめなければなりません。地球でいちばん生命の気配が薄い場所が、別の惑星で生命を探すための練習台になっている。乾燥という性質が、そのまま宇宙への入り口になっているわけです。
ちなみに「どこが一番乾燥しているか」は、降水量で比べるか、空気中の湿度で比べるかによって答えが変わります。ドライバレーとアタカマは、どちらも条件次第で「世界一」と呼ばれる、乾燥界の二大巨頭といえるでしょう。