間欠泉はなぜ噴き出す?
地下で100℃を超えても沸騰できずにいた熱水が、圧力が下がった瞬間に一気に沸騰して噴き上がります。
地面にあいた穴から、ときどき思い出したように熱湯と蒸気が吹き上がる。これが間欠泉です。「間欠」とは、一定の時間をおいて起こったり止んだりすること。ずっと湧き続ける温泉とは違い、間欠泉は静かな時間と激しい噴出を繰り返します。
なぜ、熱いお湯がわざわざ間をおいて噴き出すのでしょう。その仕組みには、圧力と沸騰をめぐる、ちょっと意外な物理が隠れています。
水は100℃で沸騰する、とは限らない
カギを握るのは、水の沸点が圧力によって変わるという性質です。私たちがふだん「水は100℃で沸騰する」と言うのは、地上の気圧のもとでの話です。富士山の山頂のように気圧が低い場所では、水は90℃にも届かないうちに沸騰します。逆に、圧力鍋のように圧力が高い状態では、水は100℃を超えても沸騰しません。
間欠泉の地下では、まさにこの「圧力鍋」の状態ができています。地下深くにしみ込んだ水は、マグマに温められた熱い岩石に触れて熱せられます。ところが、その水の上には、地上まで続く水の柱がのしかかっています。深い場所ほど水の重さによる圧力が大きくなるため、地下の水は100℃をはるかに超えても沸騰できません。アメリカのイエローストーン国立公園にある有名な間欠泉オールド・フェイスフルでは、地下約22メートルの深さで118℃という水温が測られています。
噴き出す瞬間に起きていること
熱水がたまっていく通り道は、細く曲がりくねっていると考えられています。そのため、熱い水が上へ逃げて冷めるような対流が起こりにくく、熱がどんどん蓄えられていきます。
やがて、最も熱い部分の水が沸騰し始め、生まれた水蒸気の泡が上の水を押し上げます。地表の穴から水があふれ出すと、地下の水にかかっていた重さが一気に軽くなります。すると、それまで100℃を超えたまま沸騰をこらえていた大量の熱水が、一瞬で水蒸気に変わります。水は水蒸気になると体積が1000倍以上にもふくらむため、その勢いで、熱水と蒸気が空高く吹き上がるのです。
噴出で水を出しきると、通り道には再び地下水がたまり始め、ゆっくりと熱せられていきます。そして十分に熱くなると、また噴き出す。これが、間欠泉が「間をおいて」噴き出す理由です。この考え方の原型は、1847年にドイツの化学者ロベルト・ブンゼンが、アイスランドの間欠泉を調べて唱えたものとされています。
世界の間欠泉の約半数はイエローストーンに
間欠泉ができるには、豊富な地下水、地下の強い熱、そして圧力を閉じ込められる丈夫な通り道という、3つの条件がそろう必要があります。そのため間欠泉は世界的にも珍しく、地球上に1000ほどしかないとされています。
その約半数が集まっているのが、アメリカのイエローストーン国立公園です。国立公園局は、園内に500近い間欠泉があり、世界の間欠泉の6割近くにあたるとしています。地下に巨大なマグマだまりを抱えるこの土地は、まさに間欠泉の王国です。
なかでも有名なのが、オールド・フェイスフルです。1870年に探検隊によって名づけられた、園内で最初に名前のついた間欠泉で、「頼れるおなじみさん」といった意味の名前のとおり、おおよそ1時間から2時間おきに規則正しく噴き出します。噴き上がる高さは約30〜50メートル。直前の噴出が長く続いたかどうかで次の噴出までの間隔が変わる性質があり、公園ではこれを利用して噴出時刻を予報しています。
ちなみに「ガイザー(geyser)」という英語は、アイスランドにある間欠泉「ゲイシール」の名前から来ています。アイスランド語で「噴き出すもの」という意味です。日本にも、大分県別府市の龍巻地獄(たつまきじごく)や、宮城県大崎市の鬼首(おにこうべ)温泉の間欠泉などがあります。龍巻地獄は30〜40分おきに噴出し、本来は数十メートルの高さまで噴き上がる力をもつため、石の屋根で勢いを抑えています。