竜巻はなぜ起こる?
積乱雲の強い上昇気流が、高さによる風の違いで生まれた空気の回転を縦向きに立ち上げるためです。
竜巻は、積乱雲の下から地上へと伸びる、激しく回転する空気の渦です。幅は数十メートルから数百メートルほどと小さいものの、その中では、ときに秒速数十メートルを超える猛烈な風が吹き荒れます。
空気が勝手にぐるぐると回り出すわけではありません。竜巻が生まれるには、いくつかの条件が、順番にうまく重なる必要があります。その舞台裏をのぞいてみましょう。
材料は「不安定な空気」と「風の食い違い」
竜巻の親となるのは、発達した積乱雲です。地上付近に暖かく湿った空気があり、上空に冷たい空気があると、暖かい空気は軽いため勢いよく上昇し、背の高い積乱雲が育ちます。このような状態を「大気が不安定」といいます。
もうひとつの材料が、「鉛直シア」と呼ばれる風の食い違いです。たとえば地上近くでは南東の風が弱く吹き、上空では西風が強く吹いている、というように、高さによって風の向きや強さが大きく違う状態のことです。
上と下で風の速さが違うと、そのあいだの空気は、鉛筆を両手のひらで転がしたときのように、横倒しの筒の形で回転し始めます。この時点では、回転の軸はまだ地面と平行です。
横向きの回転が、縦に立ち上がる
ここで積乱雲の出番です。積乱雲の強い上昇気流が、この横倒しの回転する空気を下から持ち上げると、回転の軸がぐいっと起き上がり、縦向きの渦になります。
こうして、上昇気流そのものがゆっくりと回転を始めた積乱雲を「スーパーセル」と呼びます。その中心にある、直径数キロメートルほどの回転する上昇気流は「メソサイクロン」と呼ばれます。スーパーセルは寿命が長く、強い竜巻の多くはこのタイプの雲から生まれます。
メソサイクロンの下で、雨や冷たい下降気流などがかかわり合いながら、回転がさらに細く引き締められ、ついに地上にまで届いたとき、竜巻が生まれます。フィギュアスケートの選手が腕を縮めると回転が速くなるように、渦は細くなるほど速く回るのです。
ただし、スーパーセルがあれば必ず竜巻ができるわけではありません。実際に竜巻を伴うのは、その一部にすぎません。なぜ竜巻を生む雲と生まない雲があるのかは、いまも研究が続く大きな謎のひとつです。
竜巻大国アメリカと、日本の竜巻
世界で最も竜巻が多い国はアメリカで、年間におよそ1200個もの竜巻が発生します。特に多いのが、中西部の大平原に広がる「竜巻街道(トルネード・アレー)」と呼ばれる地域です。
アメリカでは、メキシコ湾から流れ込む暖かく湿った空気と、ロッキー山脈の方から吹く乾いた空気、カナダからの冷たい空気がぶつかり合います。しかも、北アメリカ大陸には東西に走る大きな山脈がないため、南北の性質の違う空気が出会いやすいのです。竜巻の材料がそろいやすい、まさに条件のよい舞台といえます。
一方、日本でも竜巻は珍しくありません。気象庁の統計では、海上で発生したものを除いても、年に平均20〜25個ほどの竜巻が確認されています。台風に伴う積乱雲や、発達した低気圧、前線の近くで発生することが多く、沿岸部での発生が目立ちます。
強さを測る物差しは日本生まれ
竜巻の強さを表す物差しとして世界で広く使われてきたのが、「藤田スケール」です。考案したのは、福岡県出身でアメリカのシカゴ大学で活躍した気象学者、藤田哲也。1971年、建物などの被害の様子から竜巻の風速を推定する方法を考え出し、その功績から**「ミスター・トルネード」**と呼ばれました。
日本の気象庁は2016年4月から、この考え方を日本の建物や環境に合わせて改良した「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)」を使っています。強さはJEF0からJEF5までの6段階で、住宅や電柱、樹木など、約30種類の被害の指標をもとに評価します。2025年9月に静岡県牧之原市などで発生した竜巻は、風速約75メートルと推定されてJEF3と評価され、国内最大級の強さとされました。
竜巻は、発生を正確に予測するのがいまも難しい現象です。気象庁は竜巻が発生しやすい気象状況になると「竜巻注意情報」を発表しています。空が急に暗くなる、冷たい風が吹く、ゴーッという音が聞こえるといった変化を感じたら、頑丈な建物の中に移り、窓から離れることが身を守る基本です。