世界一雨が多い場所は?
インド北東部のマウシンラム。年間の平均降水量は約1万1900ミリで、東京の7倍あまりです。
11,872mm
梅雨の時期、毎日のように降る雨にうんざりすることがあります。東京の年間降水量は、平年でおよそ1600ミリ。世界の平均と比べれば、日本はもともと雨の多い国です。けれども世界には、その東京の7倍を超える雨が降る場所があります。
雨の多さで世界一とされるのは、インド北東部、メガラヤ州の丘陵地にある村、マウシンラムです。
1年で、12メートル近い雨
ギネス世界記録によると、マウシンラムの年間平均降水量は1万1872ミリ。1年間に降った雨がもし流れ去らずにたまり続けたら、水深は12メートル近くになる計算です。
マウシンラムから十数キロメートル離れた町、ソーラ(チェラプンジの名でも知られます)も、雨の多さで名高い場所です。かつてはこちらが世界一雨の多い場所として知られていました。1860年8月から翌年7月までの1年間に、2万6000ミリを超える雨が降ったという記録をもち、これは1年間の降水量として、今も世界最高の記録とされています。
雨を生む、海からの風と山の壁
これほど雨が多い理由は、地形と季節風の組み合わせにあります。
夏になると、インド洋からベンガル湾を越えて、たっぷりと湿気を含んだ南西の季節風が吹き込みます。ベンガル湾の北に広がるバングラデシュの平野は低く平らで、湿った空気をさえぎるものはほとんどありません。その空気が真っ先にぶつかるのが、平野の北にそびえるカシ丘陵です。
山の斜面にぶつかった空気は、押し上げられて上昇します。空気は上昇すると膨らんで冷え、含みきれなくなった水蒸気が雲となって、大量の雨を降らせます。標高1000メートルを超える丘陵の上にあるマウシンラムやソーラは、まさにこの「山の壁」の最前線に位置しているのです。雨の大部分は、6月から9月ごろのモンスーンの季節に集中します。雨の多い6月や7月には、ひと月だけで東京の1年分を大きく上回る雨が降るのです。
雨とともに生きる知恵
雨の多い土地の人々は、その環境に合わせた暮らしを築いてきました。カシ丘陵に暮らすカシの人々は、竹や葉を編んでつくった「クヌップ」と呼ばれるかぶり物の傘を使ってきました。頭から背中までをすっぽり覆うので、両手を空けたまま農作業ができます。
なかでも有名なのが、「生きた根の橋」です。ゴムノキの仲間の木の根を、川の対岸へと何年もかけて導き、絡み合わせて育てた橋で、雨季の激流で木の橋が傷みやすい土地で生まれた工夫だといわれています。生きている木の一部なので、根が太くなるにつれてかえって丈夫になり、長い年月にわたって使われ続けているものもあります。こうした根の橋が残る文化的景観は、2022年にユネスコ世界遺産の暫定リストにも加えられました。
王座をうかがう候補たち
もっとも、「世界一雨の多い場所」には異論もあります。南米コロンビアのロロやロペス・デ・ミカイといった町では、年間1万2000ミリを超える平均降水量が報告されています。ただし、観測の期間や方法をめぐって疑問も指摘されており、公式な記録として広く認められるには至っていません。ハワイ・カウアイ島のワイアレアレ山も、年間1万ミリ近い雨が降る多雨地帯として知られています。
日本では、鹿児島県の屋久島が雨の島として有名です。林芙美子の小説『浮雲』で、ひと月に35日も雨が降ると書かれたことでも知られ、山間部では年間の降水量が8000〜1万ミリに達することもあるといわれます。世界の多雨地帯と比べても、決して引けをとらない雨の量です。